定義
「OA化時代の食生活」(1985年)の表紙にある11種類の食材をあえて厳格にとらえることにする。「OA」とはオフィス(『静かな事務所』)のオートメーションである。必然的に平日のランチを考えることになる。朝食と夕食はプライベートの領域であり、勤務時間中の休憩時間の食事である昼食だけが職場として責任を持つ部分ということである。年齢・性別・体格・業務の運動強度によって変わる適正カロリーは量で調節できるものであり、まずは献立だけを考えればよい。
- 大人が抵抗なく乳製品を摂れる方法:マヨネーズの代わりにクリームチーズで和える
- エビ:業務用や中食では制約なく使える
- リンゴ:現在の環境は変化しているが原著に即して可能な限り使う
- ナス:冷凍の揚げナスを前提とする
- 大根:主菜にはしない
- さば:アレルゲンとして要注意であるが上掲の解釈に即してあえてさばとする(白身魚・ツナ・鶏肉での代替が可能)
- えんどう豆:現在の環境は変化しているが原著に即してあえてえんどう豆とする
- トマト:最大限に活用する
- キノコ:原著の年代に即してエリンギは用いない
- 主食:コメまたはパンとする
- ニンジン:現在の生食に適するものを前提とする
「OA化時代の食生活」(1985年)から現在までの大きな変化として、コンビニや外食の充実(決して不健康ではない)がある。とはいえ、確たる意識と知識なしに本人任せにしては容易に大きな偏りに陥る。信じがたいことに自分の好物を自分で把握していない人がいる。自分の好物を知らずには自分を自分の好物で鼓舞することができないのであり、『OAごはん』を考える意義はここにある。
そして、いよいよ『OAごはん』を最新のAIにより画像化する。さながらアニメの「料理作監」である。実際に調理して食べるつもりで取り組んだが筆者は「さば」が食べられない。まさに白身魚・ツナ・鶏肉での代替が可能、あたかも白身魚・ツナ・鶏肉であるかのように置き換えて考えたのであった。ツナ缶の汁気ぜんぶでしめじと枝豆を煮るように焼いてケチャップを加えたペースト状のものをつくって満足したあと、インゲンを刻んで入れたドライカレーをつくったのであった。
献立例(※AI画像)
これらの画像の生成も日本語の指示により行なったが、実際にAIに与えた指示はAIの実際の挙動を踏まえ(特に動画の生成を英語により行なうことを通じて体得したところに基づき)英語を強く意識した日本語となっている。献立に関する指示に注力させるには背景と食器の色を別々に指示する余裕はない。なんと主語を省略して「都会的な白基調」とだけ指示することで背景と食器がだいたいそのようになってくれるという実に座りの悪い挙動に慣れるしかない。画像全体については「赤紫とチャコールグレーのクロス」「赤のクロス」とのみ指示することで包括的な調整ができている。名詞も「クロス」という漠然としたものにすることで、ランチョンマットであったりテーブルクロスであったりと実に都合よく解釈されるが、「赤のクロス」と指示すると背景に「赤い東京タワー」が現われたのであった。『一宮から揚げトリシューラ』のレモンとパセリではないが、乗り継ぎのアンカレッジでは「うどん」をすする時代である。
スープに最初からスプーンが刺さっていたりする行儀の悪さについては追加の指示により個別に修正を加えた。ただし、箸を横向きに置く指示は正しく解釈されないし、「和風おろしソース」は真っ白な大根おろしになった。どうやっても『池袋ハンド武蔵』を右綴じにできなかったのと同じである。日本語が通るからといって日本語が理解されているわけではないというのは変な時間のコールセンターがインドで稼働しているような場面でも直面するところである。「エビのパエリア」の画像では木製のフォークとスプーンが描かれていたのを銀に変えたが、この木の質感は画面内で右側のランタンと対になっていたため、単純になくすと全体の調和が崩れる。代わりにサラダボウルを磁器からアカシアに変えた。「ジェノベーゼ」にはフォークが刺さっていたが奥のパンにバターだけがありバターナイフがなかった。バターナイフがフォークに化けていたのかもしれない。
いかにも実在しそうなものなら造作ないが、架空の「黒糖パン焼きさばチーズサンド(リンゴ酢使用)」を描かせるのには相当の労を要した。「さば」の英訳に迷ったのか「Grilled & Cheese」となっていたほか、「さば」のマークが赤で「リンゴ酢使用」のマークが青というストループテストのような状態になっていた。飲料には「ニンジン」の左下にミカンの大きさでタマネギに見える欠けた物体が描かれてすらいた。緑茶の紙パックは「伊藤園」が完全に再現されてしまったので「無地にする」と指示したところ、どう見ても日立な電子レンジをピンク色で塗りつぶすEテレ、まさにどう見ても日立な電子レンジをピンク色で塗りつぶすEテレがごとく緑色で不自然に塗りつぶした絵になってくれた。仕出し弁当風の紙容器(折箱)の蓋の内側の透明フィルムは追加の指示により追加したものである。ビバ・エフピコ。酢飯にはアルミが使えない。
画像生成の指示の1つ1つには応えてもらえるが、食材の大きさが明らかにおかしい(あるものは大きく描かれ、別のものは小さく描かれる)、食器の大小がおかしい(スープが巨大で主菜が小さい)など、全体の整合は甘い。変な時間のフランスのハイウェイのオートグリルで朝昼晩まとめた食事がごとく2人前のようなものもある。複数のものを同時に修正させる指示はまずうまくいかず、最終的に直しきれなかった箇所が多々ある。小さめの2枚のランチョンマットを突き合わせて敷くのは(家では)実際にもすることだが、境目を跨がずにサラダボウルを置こうとした形跡がある。箸を縦に置く一方で畳のフチを踏んではいけないということだけは妙に律儀に守るのがかえって生々しい。多国籍という点ではチューブから絞ったままのマヨネーズとケチャップはビジュアルとして気持ち悪いため絶対に避けるが、調理にケチャップを使うのは「ビネガーが効いたトマト」という感想になり、日本で思われるような子どもっぽさや手抜き感は出ないだろう。





